なんと、あの藻谷浩介さんに会うことができました。

たまたま伊豆大島旅行で元町の宿泊先を探して暗い夜道を歩いていたときのこと。

町内放送で「椿小学校で19時から講演会が行われます。里山資本主義の著者の藻谷浩介さんを迎えて~」という内容が流れてきました。

夜の町内放送というのも少々怖いものですが、それ以上に「あの藻谷浩介さんが来るの?本当に?」と半信半疑。

騙されたつもりで椿小学校へ行ってみると普通に受付が行われており、予約不要、参加無料、出身市町村も問われずあっさり参加できました。

藻谷さんの書籍は2冊読んだことがあったので考え方などはある程度把握できているものの、実際の講演会でどのようなトークを繰り広げるのか興味津々。

ということで、今回は藻谷さんの講演会に参加したときの様子をレポートしてみます。
特にここでは、書籍だけでは感じ取れないライブとしての藻谷さんの人柄、講演の進め方、雰囲気を少しでもお伝えできればと思います。

(※以下の文章は、あくまで私が聞いて記載している伝聞です。正確性は求めずに、参考として読んでいただければと思います)

1.冒頭の挨拶

学校の体育館に並べられたパイプ椅子の半分くらいが埋まり、19時に予定どおり開会。

まずはユニバーシティ大島という活動団体の20代女性と思われる方の挨拶から。かねてから「WE LOVE OHSHIMA シリーズ」という企画を行っており、その第4回として藻谷氏をお呼びしたのが今回の講演とのこと。

そして町長の挨拶。「未来に向けて住みたくなる大島」を目指すといった趣旨の挨拶でした。

2.朗読「鎮魂の詩」

ちょうど1年前の2013年12月、伊豆大島で災害が起こり甚大な被害を受けたことが今回の講演の背景のひとつ。

朗読はアリトピアという、伊豆大島のアリの話。静かな空気の中での朗読というのは気が引き締まるもので、いい雰囲気になったところで講演を迎えることになりました。

3.藻谷さんの登場、自己紹介

お待ちかねの藻谷さんが登場。参加者の拍手の中、講演用机のある檀上右手でご挨拶。

本題としての伊豆大島の話の前に、自己紹介として活動の詳細の話となりました。藻谷さんの人柄やポリシーについても知るいい機会でしたので、幾つか紹介してみます。

(1)藻谷さんの予定管理は、なんと「Excel」

最初に藻谷さんがスクリーンでスケジュールを見せてくれたのですが、見てビックリ。

テレビ欄のようにぎっしりと詰まった、過密スケジュール。
横軸に日付、縦軸に時間、各予定が色付けでジャンル分けされていて目がチカチカしそう。
これには参加者もどよめきました。

手帳やスケジュール管理ソフトではなく、Excel管理というのも少々意外。
とはいえ、予定のシフトのしやすさや俯瞰した見やすさでExcelを利用するのは理に適っているのかもしれません。

(2)過密なだけでなく全国を飛び回る慌しさ

地域コンサルタントとして苦境にあえぐ地方自治体や過疎地にも出向く藻谷さん。
1ヶ月で37都道府県に行くこともあるそうで、東へ行って西へ行っての繰り返しだとか。

十津川(奈良)へ行った次の日には岩手、そして米子(鳥取県)、といった具合。
地域を絞って効率的にまわらないのは、各地域の都合に合わせているからでしょう。

(3)都会より田舎優先とするポリシー

藻谷さんのポリシーとして、都会より田舎を優先するとのこと。

この日は衆議院選挙の日。
某テレビ局から選挙特番の番組出演依頼が来たものの、お断りしたそうです。
理由は明快で、この伊豆大島の予定が先約として入っているから。

好感を持てたのは「自分の本来の仕事は地域を活性化すること。地域から依頼された先約がある限り、テレビには出ない」とおっしゃっていたことで、コンサルタントとしての立場、ポリシーをしっかり守って活動されているのだそうです。

(とはいえ、テレビで全国に発信したい想いもあるといった趣旨のこともおっしゃっていましたが)

高性能のプロジェクタが用意されており、大きいスクリーンでExcelやPowerPointの講義資料が映されていてしっかり見えました。

4.藻谷さんの講演

さて、伊豆大島をテーマにした藻谷さんのプレゼンテーション。
「里山資本主義-しなやかな大島へ」と題して、話に入っていきました。

(※色々書いてしまうと諸所の問題をはらみそうですので、簡略化して記述します)

(1)地域活性化って何?

最初に「地域活性化って何?」という問いかけのスライド資料でスタート。

わかりそうだけど考えてみるとモヤッとしてくる問いかけです。
地域を活性化するってどういうことだろう?どうすればいいのだろう?

交通を便利にすること?
災害対策をすること?
好景気にすること?

そんな問いかけから、目指すべき地域活性化の出来姿についての解説が行われていきました。

(2)地域活性化できていない市町村でよく聞く言葉とは?

こんな問いかけで、参加者にも考えてもらう流れの講演。
藻谷さんが事例を話していき、穴埋めのような形で出題。

藻谷さんの講義では、会場の参加者へ向けて問題を出して答えてもらう「参加型」の流れを組んでいるのも特徴。特定の人を当てるのではなく「せーの」で会場全員に答えてもらう形式です。

せーの→「なにもない」(この島には何もない)
せーの→「あたりまえ」(そんなのここでは当たり前)

もちろん人によってバラバラな答えが一斉に出るのですが、聖徳太子かのように藻谷さんはいい具合に聞き取ります。スゴイ。

ちなみに「なにもない」「あたりまえ」という言葉、確かに衰退している地域でよく聞きます。

(3)伊豆大島の人口を踏まえた解説と将来予測

藻谷さんが人口推移をもとに解説、将来予測を行う論調で話を進めることが多いのは、書籍「デフレの正体」でおなじみ。そんな流れで講演が深堀されていきました。

なお、藻谷さんのプレゼン資料で用いられていた人口推移は、国立社会保障・人口問題研究所の予測を用いているとおっしゃっていました。年金計算のために予測しているのだそうで、藻谷さんいわく結構当たるとのこと。

伊豆大島、東京全体、中国、の3つを比較した資料になっており、厳しい現状は伊豆大島だけではなく世の中全体の流れであることなどの解説がありました。

(4)交通が不便だと過疎や衰退するとは限らない

今回、伊豆大島の講演ということで伊豆七島の比較クイズもありました。

意外にも伊豆大島よりも飛行機などの利便性の高い八丈島のほうが生産人口年齢が減っていき厳しい状況であるということを解説されていました。

以上のような内容を筆頭に、様々なエピソードや解説で発見の多い講演でした。こういう細かいエピソードや藻谷さんの行動指針って書籍などではなかなか知りえないものですね。

5.質疑応答

もともと20:30から30分間の質疑応答時間を予定していたプログラムだったのですが、
21時まで熱く語られていたことで質問はひとりだけ限定で受けていました。

質疑応答の内容は……すみません、忘れました。
町民の参加者の層の話だったでしょうか?女性からの質問でした。

まぁ時間配分は仕方ないですね。行きの飛行機で資料を完成させたとおっしゃっていたので、プレゼンテーションの時間配分まできっちりリハーサルできなかったのでしょう。前述の予定表を見ればそれも仕方ないと納得できるものです。

6.終了後に少しだけお喋りできました

講演終了後、大半の人はパイプ椅子を片付けて会場を立ち去ったのですが、一部の方が順々に藻谷さんとお喋りをして、藻谷さんが名刺を渡していました。

(私も少しだけ藻谷さんとお喋りできて、八王子市に関する話など一言二言やりとりできました。もちろん名刺もいただけましたよ)

7.おわりに

実際に会ってみた藻谷さんの人柄ですが、どことなく教授肌というのか大学の講義を思わせる感じがしました。

書籍(特にデフレの正体)では辛口な物言いがちょっと微妙でしたが、それも何となく活字にするからきつめな印象になるだけで、こういった講演だと笑いが起きることもあるくらい。

あとは、講演中の歩幅が短くてコミカルな感じだったのと、プレゼン資料が間違っているなどのときに焦る感じもどこか可愛らしい感じでした。

書籍を読んで前提知識を有していた人にとっては面白くてわかりやすい講義だったと思います。何もなく参加した町民は面食らったかもしれませんが。そんなこんなで有意義な講演でした。