今回の酒蔵見学レポートは、くま川鉄道の東多良木駅から徒歩圏内にある抜群(ばつぐん)酒造さんです。のどかな田園の広がる球磨川の橋から少し奥地に入った細い路地にある小さな酒蔵を紹介していきます。

1.酒蔵レポート

球磨地方で球磨焼酎を造る酒蔵のひとつ、抜群酒造。多良木町エリア(球磨郡多良木町)に属する酒造で、くま川鉄道の東多良木駅から徒歩15分程度という立地。大正12年創業です。

球磨川から近くて田んぼが沢山ある田園に囲まれつつも、舗装された道路沿いに軒を構えています。

道路沿いの入口は簡易的な売店となっており、事務所の入口といった印象。

特徴的なのは、入口の外から商品陳列が真正面に見えるというレイアウト。ありそうで意外と無い配置だと思いますし、くまモンのワンカップが顔を見せているのも可愛くて目を引きます。

あらかじめ電話で酒蔵見学の予約を取っておき、当日来訪。酒造のブログでも銘柄説明をされている男性(酒蔵の社長)が応対してくれるようで、私のときもその男性に案内していただきました。

売店から建物内通路を経て蒸留蔵、仕込み蔵、貯蔵蔵の順に続いており、ひとつずつ説明をしていただきながら見ていくことができます。

まずは蒸留機。かつては常圧専用機と常圧減圧兼用機が1台ずつあったそうですが、常圧専用は使用を終えて撤去したとのこと。今は1台で常圧と減圧それぞれの焼酎を造っているとのことです。

写真右側に入れる「もろみ」は1回の蒸留で1700リットルを使用し、700リットルの原酒が左側のタンクに貯められていくそうです。確か中央奥の円筒型タンクが蒸留時の熱として用いるボイラーだったと思います。

稼働していないときは右側のタンクの中を覗くことができます。大手の蔵だとここまで近づいて見せてくれないもので、小規模経営の蔵ならではの利点のある見学です。また、高圧洗浄など興味深い話もありました。

蒸留蔵と仕込み蔵の間は2メートルくらいでしょうか。隣り合っているのですが屋根などでつなげておらず、蒸留蔵を出ると青空と心地よい風が肌を撫でていきます。粋なもので、青空の下で球磨地方の自然と焼酎造りの関連性について解説していただけました。

この酒造から広がる北の山側は多良木町の黒肥地(くろひち)と呼ばれる住所で、山々から流れる細い川たちが大きな球磨川へと合流しています。水の豊かな焼酎造りに適した場所ということです。

他にも地理的な話や歴史について教えていただけて、その博学ぶりに脱帽。この土地で生まれ育ち、郷土を愛していることを感じさせてくれる方の案内です。

写真は一次仕込み用のタンク。いわゆる製麹(せいきく)という工程で用いるものです。私が見学したときは近くに蛇管なども置かれていました。ちなみに、背中側には二次仕込み用の縦型タンクがあります。

その後、樽熟成の貯蔵蔵も見せてもらいました。ここの樽は主に南ヨーロッパ産のシェリー樽の古樽を使用しているとのこと(酒造の公式サイトより)。甕(かめ)熟成は行っていない様子です。

以上の内容でお腹一杯かもしれませんが、建物の規模感や機器類の質感をぜひ間近で見学することをオススメできる酒蔵です。見学向けに特化した大手とは異なった魅力が一杯詰まっていることを実感できると思います。ここで書ききれない解説も多々あって学べるものも多く、繁忙期ではない時期だったためか色々と配慮していただいて心地よく見学できました。

ちなみに、この酒蔵からわずか30mの場所に「多良木町埋蔵文化財等センター」があります。昭和初期に建てられた米倉庫を改造し、町内で発掘された石器時代から弥生時代の埋蔵物が大量に展示されている施設です。2014年7月19日にオープン。

2.商品レポートと試飲

今回は試飲はせず即決で「熟香抜群」をチョイス。一般的にありがちな「試飲用のボトルを常時置いておいて好きに試飲」というスタイルは取っていない様子。どうやら複数人の団体で予約すると、蔵の中で解説を交えた試飲を用意してくれるようです。

主要銘柄は減圧蒸留のベーシックな「ばつぐん」と、常圧蒸留の「黒麹抜群」、そして減圧の樽熟成「熟香抜群」。贈り物向けの器に入った長期熟成「肥後椿」「肥後銘花」や、くまモンラベルの360mlボトルもあります。商品種類としてはかなり少ないと思いますが、必要十分で揃っているこのラインナップは個人的に好きですし何よりわかりやすい。

多良木町の酒蔵の焼酎は若干手に入れにくく、観光客が訪れやすい人吉や湯前では別エリアとなり特に観光客向けのお土産店では扱っていないところも。当酒蔵、多良木町内、もしくは通販での購入で手に入ると思います。